10. ハウス環境制御装置の自作

こんにちは。
坂井です。

今日は環境制御の装置を自作してみていることについてご紹介します。

環境制御とは

まず、ハウスの環境を制御する場合、その対象としては以下の様なものがあります。

・灌水:水やり(灌水)を行う
・肥料混入:灌水の際に肥料を水に混入する
・換気:ハウス側部や上部の被覆(ビニール)を開閉する
・遮光:ハウス内の照度を調整する
・加湿:ミスト装置
・培地温調整:土の温度を調整する
・CO2調整:CO2の施用
・対流調整:循環扇で空気を動かす
・それらのデータをロギングしたり転送したりする
など。

植物の成長に対して、最も大きく影響を与える要素として
・光
・温度
・水
・肥料
・病害虫抑制
などがありますが、環境制御はそれらをなるべく安定した状態に保つことを目的としています。
自然条件下では上記の要素は日々大きく変わるため、植物の成長速度も安定しなくなります。
それは自然の姿なので、当たり前ではあるのですが、生業として生産をするためにはある程度安定したリズムで生産を続けることは重要です。
また、1人あたりの生産規模が大きくなるほど植物の成長の変化から受ける影響の幅も大きくなるため、生産規模に合わせて環境制御の必要性は高まります。
例えば、1ヶ所の農場であれば1人でもその場で環境を確認できますが、農場が3ヶ所、10ヶ所と増えれば増えるほど、各農場それぞれの状況の把握は難しくなっていきます。

生産規模を増やす、生産の安定性を向上させる、といった場合に欠かせないのが環境制御です。

問題はコスト

では、環境制御装置の導入が生産にメリットをもたらすものなのかというと難しい問題です。
通常、環境制御装置は農業資材メーカーなどが製造しているものを導入する場合がほとんどですが、全体的に高額です。導入コストを上回るだけの生産性の向上が見込めない価格のものが多いのです。
日本の農業全体が斜陽傾向、生産資材の販売数減、コストの高騰、と負の連鎖のなかで資材メーカーがコストパフォーマンスの高い装置を作れないのもやむを得ないのかも知れません。
とはいえ、これから拡大しようという生産者にとって環境制御の自動化は避けては通れません。
坂井は2019年頃、導入を検討して数社から環境制御装置の見積もりをいただいたことがありましたが、どれも価格が見合わず断念しました。省力化や安定化の恩恵の数年分を打ち消してあまりあるほどの導入コストで全く手が出ませんでした。


マイクロコントローラー

その頃、休日を利用して農業の勉強をしに農場に通ってこられていた会社員の方からマイクロコントローラー(マイコン)の話を伺いました。
その方はラズベリーパイ(ラズパイ)を使って生産を自動化し、いちごを作ろうとされていました。
マイコンは安価なコンピュータですが、農場の環境制御に用いるには十分なものであることを知り、そこから興味を持ち、自分でも試行錯誤を続けながら今に至っています。

坂井は今のところArduinoを使っていますが、今後はESP32なども試しながら最終的にはオンラインで確認や操作ができるところまで持っていければと思っています。

2019年にラズパイという単語を初めて耳にしたので4年近く経過していますが、マイコンの農場実装はまだ駆け出しです。(マイコンに動作を書き込むためのプログラミングはゼロから自習し、ハウスで装置を作動させるための装置の選定や配線などもゼロに近いところからの学習でしたので非常にゆっくりした進みです。)

最初に自動化したのは遮光カーテンで、それも少しずつアップデートしています。
まずはモーターで遮光カーテンを開閉(電動化)をできるようにし、次に開閉の制御を温度条件で、その後に(温度+照度)条件で開閉を制御できるようにしました。温度計や照度計も自作です。
今のところ自動化しているのはそれだけです。
生産しながらの実装なので進みは遅いです。
次は雨天にハウス上部の開口を閉める装置、そして培地の水分量・pHをロギングする装置を作るつもりです。
雨天時の開閉装置は秋雨に間に合うように。
培地のロギング装置は年末までには。

ゆっくりですが、進めていきます。

 

次は外国からの人材が農場を支えてくれていることについて書いてみます。

 

坂井