14. 風の谷のいちご(3)
こんにちは。
8月に記事を書いてから2ヶ月も開いてしまいました。
夏が暑過ぎて、疲労もあり、倒れてしまったり、そこから色々と追われるまま、かなり久しぶりの更新となりました。継続は難しいけど力になると信じて。
前回の続き、ECについて。
ECは農業の活路になるのかもしれない。
何年か前、そう考えて取り組んだ時期がありました。
まだコロナの前です。
私の場合、結果はNOでした。
農家は売るよりもつくるべきである。
ECを活用して販売することは楽しかったし、販売単価も上がりましたが、一番のネックは手間が増えること。
農業の担い手不足は深刻、農産物も不足しているということは、生産に集中したいし、そうすべきです。
ECサイトに注力すると発送の数が増えます。ほぼ小ロットでの発送になるので梱包にかかる時間が増え、そこに労力を取られます。
それでも販売単価が上がるので、EC対応に人手をかけてもコスト的には割には合います。ただ、労力に限りがあるため、ECに対応する分、生産に充てる時間は削られます。生産量を増やすことはできなくなります。
ECに限らず、販売に力を入れて単価を上げていく努力をすることで短期的には利益が増すのですが、販売に力を入れれば入れるほど販売に頼った経営になり、長い目で見ると生産量が増えにくくなります。実際、生産するより販売する方が簡単だし、利益は上げやすいので、販売に頼れば頼るほど、生産より販売で利益を上げようとする体質になっていきます。
「生産施設を持つのはリスクだから、生産は人に任せて販売やコンサルをした方が良い」とまで言う人もいます。
狭い視野で自分のことだけを考えれるならそれも正解かもしれません。
しかし、もう少し視野を広げて、農業生産の継続や、そこから生まれる経済活動の持続について考えれば「リスクを負って生産する人」こそ大事であることがわかります。
今年(2023年)は農産物が高騰しているようですが、生産者の販売額がどれほど上がっているでしょうか。少なくとも弊社では全然上がっていません。そしてコストの高騰や猛暑の影響で利益は見込めなくなっています。
それでも生産者の販売額はなかなか上がらない。
そういう風潮はあると思います。
農産物を買い取る側も、ほとんどの生産者が個人事業で休みもなく何とかやりくりしている状況をちゃんと直視すれば、もっと余裕を持った生産ができるような価格にしなければいずれ行き詰まることはわかるはずですが、「今までこれでやってきているのだからこれからも大丈夫でしょう」という認識です。
そういう状況が、生産者自身が、販売価格が上がらないのであれば自分で販路を開拓しよう、と考える風潮を生んでいるのですが、これは全く合理的ではない。生産者の数は不足しており、今後は、圧倒的に不足するのです。
つくる人が減ればその先の経済活動はないわけで、つくる人を増やすか、せめてつくる人がつくることに集中できる状況を作り出すことが先決であって、つくる人が売る人になっていくようなことは避けなければならない。
弊社は販売を手伝ってくださる方のお力添えもあり、Amazonのいちご部門ランキングで1位にもさせていただきました。(2021年夏)
このブログを書いているshopifyのサイトも自社で運用するECサイトとして使い始めたものです。
が、現在も、今後も、ECや自社での販売はやらないと考えています。
理由は、つくることに集中するためです。
販売単価が上がらないのであれば、上げてもらうように交渉すれば良い。
ちゃんとした価格で取り扱ってもらい、お客様と良い関係を構築し、生産者はつくることに集中できるようにする。
弊社は今年、そのようにしてやってきています。
生産に集中しよう、と。
生産に集中するために辞めたことは
・販売事業。
・コンサル事業。
・その他生産以外の営業活動。
そうすると見えてくるものが変わってきました。
そして、いくつかのことに取り組み始めました。
今と今後の取り組み。
・自動化、制御装置まわりの内製化。
・雇用、就業環境の充実。
・未来を担う人の育成。
あれ?
生産に集中しよう、と体制を整えた結果、取り組み始めたことは「生産」というよりは「生産を取り巻く環境の整備」になりました。
まずはここから、ということです。
「生産」はその先にあります。
次回はこれらの取り組みについて書いてみたいと思います。
坂井