3. 夏秋いちご農場の1年

私たちの農場の1年の流れをご紹介します。

1月。
大鹿村のいちご農園がある場所の標高は700メートルほど。
準高冷地ですが1月の平均気温は氷点下です。
夏秋いちごの農場には基本的に暖房機は設置されていないため1月はハウスを休ませています。例えば育苗などのためにハウスを使用する際は凍結による水回りの破裂に細心の注意が必要です。
1月の主な仕事は片付け。農場も気持ちも休ませて片付けをします。

2月。
苗の植え付けです。
2月も寒波の際は氷点下10℃くらいにはなりますが、徐々に春めいてきて、晴天時には閉め切ったハウス内であれば30℃を超えるほどになります。
晴天率が高く日差しが豊富な2月は、冷え込みにさえ注意すれば苗の初期生育に適したタイミングです。

3月。
植え付けた苗の生育管理。
初期の水、肥料、気温の管理です。
特に根の伸長を優先させるような管理をします。

4月。
引き続き苗の養生期間です。この頃になると苗というより株になってきます。
充実した花芽の形成が始まる頃で肥料管理や病害虫管理に気を使う時です。

5月。
花芽の出蕾が始まります。
肥料や水の管理は刻々と変化していきますので観察と細かな対応が必要です。
また虫も発生しやすい時期なので早めの対処を心がけます。

6月。
いよいよ収穫が始まります。
冬のいちごが終盤を迎え、市場が夏いちごに切り替わるタイミングです。

7月。
連日、収穫、栽培管理、病害虫管理に没頭します。
実は6,7月は1年のなかでは1日の平均日照時間が短い時期になります。
雨天が多いためです。
日長(日の出から日の入りまでの時間)自体は長い季節なので晴天時と雨天時での日照時間のムラがとても大きく感じる時期です。
それがいちごに与える影響を考慮する必要があります。

8月。
変わらず連日収穫ですが、6,7月の日照のムラと高温による疲れがいちごに現れる頃です。疲れを軽減するための栽培管理が重要です。

9月。
夏秋いちご後半戦が始まります。
6,7,8月の栽培管理の成果が出ます。

10月。
天候の変化や病害虫に注意し、いちごのケアを怠らないようにします。
翌年の苗作りをする場合はこの頃に行います。(苗を購入する場合は苗づくりはしません。)

11月。
9,10月の栽培管理の成果が出ます。
急な冷え込みに気をつけてハウスをなるべく暖かく保つようにします。

12月。
収穫も終盤です。
片付けや翌年の作付けなども意識しながらいちごに感謝を伝える時期です。

 

ざっと書き出すとこのような流れになります。

その時期その時期で知恵や技術が求められる場面の連続です。

 

いちご栽培に求められるものは
・いちごの生理や栽培の知識と経験
・病害虫と農薬の理解
・農業技術の探究
・いちご需要に関する調査
・ハウスや栽培システムの建設やメンテナンス
・電気の知識や簡単な電気工事
・水道の知識や簡単な配管工事
・化学の知識と肥料の調合
・IoTの知識や工作
・手の器用さ、作業を効率化し続ける工夫
・実行するための気持ちと体力
・持続するための経済と環境の視点
・様々な自然科学の知識と農業への応用
・様々な社会科学の知識と農業への応用
・様々な思想哲学の知識と農業への応用
などです。

農業は、自然との関わり、社会との関わり、経済との関わりを紡いでいく営みです。

自然環境の変化を知り、日毎月毎に変化する自然環境との対話・対応を続けることで1年を一周します。